ヘルスケアビジネス探訪記 in Malaysia

北海道ヘルスケア産業振興協議会会員の皆さま、初めまして。熊谷健志と申します。

去る1月まで介護新聞さんに投稿させていただいておりましたので、ご存知の方もおられるかもしれませんが、私は現在、職場を休業し、マレーシアにて大学院に通う傍ら、フィールドワークとしてマレーシアにおけるヘルスケアビジネスの現状および日本の同ビジネスの海外展開の可能性について調査などを行っております。この度、貴会から引き続き本件に関する情報発信をさせていただく機会に恵まれました。私見を含む拙文ではございますが、どうかお許しいただければと存じます。

ひとえにヘルスケアビジネスと言っても非常に幅が広いものがあります。最先端の医療機器によるサービス提供から、もっと身近に健康に役立ちそうな活動に至るまで、私も自身が考察すべき対象が厳格に掴みきれている訳ではありません。ただどんな階層であってもニーズを調査し、市場の分析を的確に行えば、ニーズも見極めることが出来るのではないかというのが現在の感想です。

一般にヘルスケアビジネスというと、とかく高度先端医療などのハイテクや、介護施設誘致などのインフラ輸出に目が向かいがちかもしれませんが、もっと身近なところにもいろいろなチャンスはあると思います。

例えばヘルスケアビジネスを広義に解釈するならば、高齢者層をターゲットにした介護予防の健康活動やサークル活動の一環であっても、定型化したビジネスモデルを構築できるかもしれません。

1)現地の老人クラブ(Senior Citizens Club Subang Jaya)見学からみえたヒント

マレーシアの老人クラブでは入会資格は50歳以上だそうです。このことは同国の定年が60歳であることを考えてもかなり若いと言えるでしょう。それだけに皆さんとてもお元気です。私が見学した施設では最高齢の方でもまだ82歳でした。マレーシアは日本よりも高齢化は進展していないこともあり、同国の老人クラブ国民会議(National Council of Senior Citizens Organizations Malaysia)への参加団体もまだ全国で40程しかありません。各老人クラブでは、日本と同じようにさまざまなサークル活動(ヨガやダンス,工芸,中国語講座など)が開催されているのですが、圧倒的な需要過多につき、現在は入会制限を行っているとのことでした。

既に日本人の可処分所得の半分近くまで追い上げてきたマレーシアですが、急速な経済発展の一方でバリアフリーの街づくりはもちろん、こうした高齢者へのソフト面での充実は現状では全くの後手に回っています。現地では日中はとても暑いので高齢者が屋外を出歩くことはほとんど不可能です。都市化率は日本よりも高く、巨大なショッピングモールはいくつもありますが、果たしてそうした施設への往来だけで、老後の精神的な満足度を担えるか甚だ疑問です。余談かもしれませんが、先日、日本でも時折見かけるように、こちらでも高周波の健康チェアを無料体験できるセミナーに列をなして高齢者が並んでいる姿を目撃しました。統計データとして表には出てきませんが、この国には数多くの「生きがいや、やりたいことの見つからない」高齢者が居場所もなく、あるいは心身の健康に不安を抱えながら、自宅で過ごしていることだろうと考えてしまいました。

こちらには日本のように温泉に入る文化はありませんが、カラオケや弁当は一般的になってきています。マレーシアでは、医療観光や海外高齢者の長期滞在ビザ制度の実績においては既に世界のトップクラスと言えますが、政府レベルでは高齢者のQOL向上のための議論はまだ緒に就いたばかりです。夫婦の共働きが一般化しているこの国において、高齢者のための安価で気軽に集えるミニデイサービスや宅配サービスのようなものは、きちんとニーズ調査をしてみる価値は十分あるだろうと感じました。

01-建物外観 02-インタビュー風景 03-手芸品を披露 04-クラブ会員集合写真

 (2)JETROクアラルンプール事務所からみえた現状と展望

企業などが海外進出を検討する際に現地で情報提供などのお手伝いをしてくださる機関に、JETRO(日本貿易振興機構)がありますが、JETROクアラルンプール事務所・シニア・アドバイザーの田中恒雄さんのお話によると、同事務所には年間、約400件の照会(うち一般企業から7割、自治体から2割)があり、近年は「クール・ジャパン」の海外戦略もあり、サービス業からの問い合わせが特に増えているそうです。残念ながら現時点ではヘルスケアビジネス関連の照会は少ないようですが、同事務所ではいち早くマレーシアにおける当該分野の将来性に着目し、こちらにあるようなレポート(クリック)を上梓されており、今後はこうした企業からの当該分野に係る照会も増えるかもしれないと思います。

01-JETRO事務所の入るビル 02-田中恒雄さん 03-事務所内の様子